中小企業経営者に使われていた生命保険を使った税金対策がいよいよ税制改正で使えなくなってしまう可能性があるようです。
生命保険を使った税金対策って何?って方のために一度簡単に説明します。
中小企業の生命保険を使った税金対策
内容を単純化するために1回支払った場合の生命保険税金対策の仕組みを説明します。保険料100万、解約した時に戻ってくるお金である解約返戻金の率を80%とします。法人税は30%と仮定します。
中小企業は、利益に対して課税がされます。厳密には用語が違いますがわかりにくくなるのでわかりやすくするために利益としましょう。税金の仕組みは「もらったお金-使ったお金=利益」、「利益の30%が税金」となります。つまり税金を少なくするためには「もらったお金」を少なくするか、「使ったお金」を増やすかをして利益を減らせばいいということになります。
「もらったお金」を要らないよって方はいないと思うので「使ったお金」を増やせば利益は減りますよね。この「使ったお金」に入ってくるのが節税ができるタイプの生命保険ってことになります。生命保険料を支払って利益を減らせば、極端に言えば0円になれば課税は0円です。
式で説明をすると「もらったお金100万-使ったお金40万=利益60万」「利益60万×30%=課税18万」となります。生命保険を60万追加すると「もらったお金100万-使ったお金40万=利益0円」「利益0円×30%=課税0円」となりますよね。「課税もされてないけど利益0円?」って方、解約すると80%戻ってくるので生命保険の中に「100万×80%=80万」が入っている訳です。
まとめると生命保険を使わないと、「手元に残る資金42万(利益-税金額)、税金18万」となります。生命保険を使うと、「手元に残る資金80万(生命保険の中)、課税0円」となります。すごく簡単な例ですがこれならみんな使いたいですよね?
これまでの税制改正
中小企業の税金対策向けの生命保険商品は今までもありました。しかし、国税庁が都度ルールを変えてきたという経緯があります。ルールが変わると生命保険会社がまたルールに触れない違う商品を作るってことを繰り返してきました。今回はこの「繰り返し=いたちごっこ」がついに終焉しそうということらしいです。
過去の税制改正であれば、長期傷害定期・逓増定期保険・がん保険と繰り返し繰り返し行われてきました。改正の方法としては通達による損金算入額の変更によって行われてきており、通達が出た後からの契約日については新しいルールにそって処理しなさいってのが多かったようです。
ただ過去の税制改正で長期傷害定期だけは異なったようで(長期傷害定期保険以前は調べていません)、既存契約の遡及を行いました。これにより全長期傷害定期加入者が通達後の支払い保険料から損金算入額が変更になってしまいました。逓増定期とかがん保険とかは通達前の契約についてはそのままの変更前のルールが適用され、通達後からは新しいルールが適用されるってことなので大分対応がことなります。今回は一体どうなるのでしょうか?
損金算入?損金って何?
損金って何って方もいると思いますので軽く説明をします。日本では財務会計の用語と税務会計の用語が異なります。先ほどの利益という言葉は財務会計の用語。「収益-費用=利益」というのが基本になります。税務会計では「益金-損金=課税所得」となります。ざっくりですが財務会計は投資家とかに会社の状況を知らせるためのルール、税務会計は税金を公平に算出するためのルールということができます。
生命保険の保険料ですが、この損金にしてよいという割合がルールで決められています。たとえば支払った保険料を全額損金にしてよい「全損」、支払った保険料を半分損金にしてよい「半損」などです。
基本的にはお金が貯まれば損金算入はできなくて、お金が貯まらなければ損金算入ができるみたいな感じなのですが、節税向けの商品はルールの隙間をつくことによってお金は貯まるけど全損という生命保険になっています。
今回はどう税制改正がされるのか?
色々な業界の方に聞いてみましたが正直わかりません。
ただ現在案としてでている解約返戻率50%以上は規制するだと結構業界としてはダメージが大きいと思います。規制の仕方としては解約返戻率50%以上になる商品は損金算入不可(資産計上)となるっていうことでしょうか?今までと比較するとかなり大きな改定となりますが、国税庁としてはそれだけなんとかしたいんでしょうかね?
中小企業向けの生命保険販売の戦略の見直し
中小企業向けの生命保険の販売の中心を担っていたのがこの節税保険。確かに中小企業経営者には響きやすいですよね。この商品が全くなくなってしまうと生命保険会社、保険代理店は大きな戦略転換を迫られます。今後はどのような市場になっていくのでしょうか?