法人保険といえば税金の繰り延べができる全損の商品が主商品として販売をされていました。今までに長期傷害、逓増定期、がん保険と税制改正があるごとに次の商品が販売されてきており、法人の契約なので保険料が高額になるため、販売手数料も高額になっていました。
保険料として数百万~数千万という契約もあるため、1件の手数料が数百万になることも普通にありました。
法人という分野なので生命保険を販売している方でも一部の人しかしか販売をしていませんでしたが、販売ができる方は高額の報酬を手にしている人も少なくありませんでした。
しかし、2019年2月から突然、規制の動きが強まり今後はほぼ販売できないようになってしまうようです。
法人保険は今後、どのような販売戦略をとっていけばいいのでしょうか?法人保険の販売をしている人の意見と私見を交えて考察を述べていきたいと思います。
生命保険の本来の売り方へシフト?
生命保険の機能はシンプルにいうと2つしかありません。貯蓄の機能と保障の機能です。
税金対策の販売方法は、税制に沿った上で、この貯蓄の機能を利用した販売方法です。この販売方法ができないのであれば保障の機能を売っていくという方向性が考えられます。生命保険の本来の販売手法と言えるでしょう。
ただし、保障の提案とういのは単価が小さい上に、潜在ニーズに対する販売であるため提案に時間がかかります。
税金対策系の商品であれば100万~300万の保険料で、手数料を50万~150万もらうことができました。
しかし、保障系の商品であれば保険料は年間で30万~50万ほど(月2万~5万程度)になり、手数料は20万~35万ほどになります。
手間がかかるのに、手数料が4分の1以下になってしまいます。
以下に手間をかけずに販売件数を増やせるか、または高単価にできるかがポイントになります。
手数料のシミュレーション
生命保険を販売する方にとって販売手数料は売上になります。仮に売上1,000万を作るためには税金対策の商品と比較するとどのようになるのでしょうか?
税金対策の商品の単価を200万と仮定します。手数料率を50%とすると1件販売すると100万の手数料がはいります。1,000万の収入にするためには、10件の販売が必要ということになります。
生命保険には次年度手数料というものが存在します。2回目以降の保険料から手数料です。税金対策系の商品は次年度手数料があまり大きくないものが多いので考慮外とします。
一方、保障商品はどうでしょうか?単価を月3万(年36万)と仮定します。手数料率を70%とすると1件販売すると年36万の70%である年間で25万が手数料としてはいります。1,000万の収入にするためには、40件の販売が必要です。
最初の手数料だけの計算ですが、同じ収入を上げるのに保障商品は税金対策商品の4倍販売をしないといけないことになります。
単価を上げるには?
では、保障商品の単価を3万から10万にあげるにはどうすればよいのでしょうか?
単価が10万になれば手数料は10万×12か月×70%=84万となります。1,000万の収入を得るための販売件数は12件となります。
10万の保険料の提案をするためには、50歳男性だと8,000万ほどの保険金額の10年定期、または4,000万ほどの保険金額の80歳~90歳満了の保障系商品だと月払保険料が10万ほどになります。
遺族の生活費だけの保障でも3,000万~4,000万の計算になることが多いので無理な提案金額ではないでしょう。遺族の生活費だと保険期間は長期間になりますが、10年定期で更新をするという提案でも保険料が5万円ほどになります。
遺族への生活費に加えて、法人がかかえている金銭的リスクは借入金の問題、運転資金の問題、自社株の問題等があるため提案をしっかりおこなえば高単価な契約での提案も可能なのではないでしょうか?
しかし、必要保障額の理由をしっかりとつけないといけないため、個人のライフプランニングの知識(社会保険等)と法人の財務の知識、さらには税法・民法などの知識も必要になるためある程度のチーム力(士業との連携)とチームをまとめるコーディネート力が必要になりそうです。
次年度手数料をしっかり狙う
個人の保険では当然かもしれませんが、法人保険・税金対策商品では次年度手数料が重要視されることがあまりありませんでした。手数料率も保険会社によって異なりますがそこまで高くはありません。契約をとったら大きく手数料を獲得!というスタイルでした。
しかし、保障商品を販売していくのであれば次年度もしっかり狙っていくべきでしょう。ここも保険会社によりますが次年度の手数料が10%あるのであれば、1年目に年間の保険料120万の契約を10契約とると、翌年は1,200万の10%である120万が契約が継続されていればはいってくることになります。
これが毎年積みあがっていくと大きな金額になるためしっかり考慮したいところですね。
囲い込みの施策が大事!
保障商品の提案で大事になるのが、「囲い込み」です。
どのビジネスにおいても重要かもしれませんが、既存のお客様を手放さないようにしないといけません。
なぜか??
次年度手数料が大きいからですね。
そのためには「解約する理由をつぶす」ことをしっかりしないといけません。
解約する理由は様々ですが、特に多いのが「何のために入ったんだろう?見直ししてもいいかな」という契約理由の不明確さです。
しっかりお客様に保障内容の理解をしていただき定期的に確認をする作業が必要になります。確認作業が必要だという点もお客様に提案時に伝えるとよいかもしれません。
資産計上でも貯蓄ニーズはあるのか?
これまで保障商品の提案について考えてきましたが、貯蓄商品のニーズは全くなくなるのでしょうか?
全損の商品と資産計上の商品を比較してみましょう。
保障が同額、保険料100万で解約返戻率が80パーセント、法人税実効税率30パーセントとして考えてみましょう。
全損 | 資産計上 | |
保険料 | 全額損金算入 | 資産計上 |
税負担軽減額 | 30万 | 0円 |
解約返戻金額 | 80万 | 80万 |
解約時益金計上 | 80万 | なし |
解約時課税額 | 24万 | 0円 |
保障額 | 同額 | 同額 |
どちらが良いとはいいにくいですが、資産計上での一定のニーズはありそうです。
現時点ではマイナス金利の影響で難しいかもしれませんが、返戻率が高くなればそれだけ保障コストは下がります。仮に返戻率が100パーセントなら保険契約期間中は実質無料で保障を持てるという話にもなりますね。
まだまだ考えないといけませんが、提案の余地はありそうですね。